イベントレポート 12/24開催 『AAI起業部 2021クリスマス企画・ スペシャル イベント 〜さあ未来に向けて-Action Trumps Everything-行動しよう!〜』
2021年12月24日に『AAI起業部2021 クリスマス企画・スペシャルイベント〜さあ未来に向けて-Action Trumps Everything-行動しよう!〜』が開催され、学び舎mom株式会社が運営を担当いたしました。
AAI起業部は、愛知県立芸術大学と愛知県立大学から社会にイノベーションを起こすことを目指して2021年に創立されました。
最終的には、自らのアイデアを形にする「起業」を目的としていますが、活動内容はそれだけではありません。先輩メンターのアドバイスや、専門家によるセミナー、多様なメンバーによるワークショップなどを通じて、個々の考えをまとめあげ、そのなかで起業家になるためのノウハウを学ぶことを目的としています。
学び舎mom株式会社 代表 矢上清乃は、AAI起業部アドバイザーとして就任。メンバーたちの起業アイデアを実現できるようお手伝いしています。その一環として、学び舎mom主催・学生向け起業講座『AIDアントレプレナープログラム』を2021年8月からスタートさせ、若者たちが生み出したビジネスのタネを育てる活動を継続的に支援しています。
今回のイベント前半では、特別ゲスト アメリカ・バブソン大学の山川恭弘先生にご登壇いただきました。バブソン大学は、アメリカの起業家教育における名門大学。そこは、トヨタ自動車(株)CEO 豊田章男氏を始め、多くの日本を代表する経営者たちが卒業した大学としても有名です。「Action Trumps Everything」は、バブソン大学が教える5つの起業家教育の方法論のひとつ「行動がすべてに勝る」という意味の言葉で、イベント名の由来となっています。
今回のイベントでは、山川先生の情熱的なスピーチに、参加者たちは力強く励まされそれぞれの夢へ向けて自信を得たように見えました。
イベントの後半では、AAI起業部AIDアントレプレナープログラム受講者や、若手起業家たちによるピッチ登壇がありました。登壇者たちはこれまでの活動を振り返りつつ、それぞれが生み出した起業アイデアを堂々と発表してくれました。それぞれの発表の後には、起業アイデアを今後さらに発展させるためのアドバイスを数多くの方々からいただくことができました。それらは参加者たちにとって、大きなクリスマスプレゼントとなったのではないでしょうか。
今回のイベントは、そんな若き起業家である彼ら彼女らの起業へ向けた更なる一歩にふさわしい、スペシャル企画とすることができました。
AAI起業部HP https://aai.itri-apu.com/
オープニング
当日の司会進行は愛知県立大学の柾凱斗さん。
オープニングでは愛知県立大学の神谷幸宏先生よりAAI起業部に関して説明をしていただきました。次に、共催の愛知県経済産業局スタートアップ推進監 柴山政明様より、資料を用いて県の施策についてのご説明がありました。
【愛知県が行っているスタートアップを起爆剤としたイノベーション創出の取組】
- 2018年10月Aichi-Startup戦略を策定
-スタートアップの考え方
- Startup戦略の具体的な取り組み
-01.スタートアップのインキュベーションとハード整備
-02.起業家の創出やスタートトアップ成長支援に向けた各種プログラム
-03.世界のスタートアップ支援機関とのネットワークを構築
-04.スタートアップ資金調達支援
- STATION Ai について
–スタートアップ中核支援拠点として鶴舞公園南に建設中。2024年オープン予定。
–開業するまでの間WeWorkグローバルゲート名古屋内に「PRE-STATION Ai」を開設。
- 愛知県スタートアップ創出ステージ支援
- スタートアップ創業資金確保の支援
山川恭弘先生による講演
Are you ready to change the world?
(世界を変えるぞ!準備はいいか?)
山川先生のエネルギッシュな第一声で講演がスタート。
先生が立ち上げられたVenture Cafe Tokyoをはじめ、イノベーションをサポートするコミュニティのこと、教壇に立たれている米国バブソン大学の起業家教育について講演していただきました。
山川恭弘先生のプロフィール等はこちらから。
コミュニティへの参加は仲間ができ、化学変化が起きる!
山川先生は、2020年に世界最大級のイノベーション・コミュニティ「ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)」のアジア初拠点「CIC Tokyo」を、仕掛け人の一人として設立されました。
また、CIC Tokyoの姉妹団体「Venture Cafe Tokyo」では、毎週木曜日に起業家向けのセッションとネットワーキングの場を提供するイベント「Thursday Gathering」が開催されています。
「毎週やるのがミソ!私も297回参加しています。こういった集まりに参加すると、グローバルなネットワークを活用して相乗効果を生み出すことができる」
と話されています。
同じように名古屋では、「NAGOYA CONNECT」が開催されており、岐阜では「Gifu IGNITE」が始動。
「今、Central Japanが熱い!」
と、東海地方への期待も熱く語って下さいました。
「こういうコミュニティに集まると、いろんな出会いがあり、いろんな情報が入って、仲間ができ、化学変化を起こすことができる!今日のようなイベントも含めて、ぜひ活用してほしい」
と、参加者へ熱く呼びかけられました。
起業家のように考え、行動すべし!
お話の後半では、バブソン大学での起業教育のコアの部分を教えていただきました。
創立から100年を超えるバブソン大学は、起業教育発祥の地と言われています。起業教育において、たくさんの「世界初」が生み出されてきました。
そんなバブソン大学で教えられている「起業」とは?
山川先生が、バブソン大学があるボストン市内の街頭広告を使って紹介してくださいました。
If you could solve one world problem, what would it be?
(世界中の問題で、あなたが解決すべき(したい)問題は何か?)
There is an ENTREPRENEUR in all of us.
(誰にでも起業家精神は宿っている)
バブソン大学では「起業家とは何か?」「起業家としての資質は?」といった問いに対しての答えや、ビジネスプランを書くことを教わるわけではありません。
まずは、「世界にある問題を自分ならどう解決するか?解決できなければ、足りない部分をどのように補うのか?」を徹底的に考え、行動に移すことを学びます。
また、起業教育とは「Entrepreneurial Thought & Action (ET&A):起業家のように考え、行動する」ことだと、山川先生はおっしゃいます。
「考えているだけでは、伝わらない。まずは一歩を踏み出す!」「できるできない、ではなく、やるかやらないか」
起業だけでなく、日常生活の行動にも通ずるこの言葉は、多様なバックグラウンドを持つ参加者たちの心に響きました。
ここで全体を通して、起業する上で大切な3つのことを教わりました。
- Action Trumps Everything 行動は全てに勝る!
- Embrace Failure 失敗を恐れるな!
- Enroll Others 周りを巻き込め!
バブソン大学で「失敗学」を立ち上げられた山川先生。
「失敗からの学びは大きく、失敗を恐れないでほしい」
と言います。
では、どの程度なら失敗して良いのでしょうか?
それについては、失敗の定量化が大切だと教えてくださいました。
「まずは、『あなた』の世界を変えることから考えてください。そこから、家族、友人、ご近所さん、コミュニティ… それがどんどん広がって、世界を変えることに繋がるのです。それが起業するということです。」
最後に下さった山川先生のメッセージです。
Are you ready to change YOUR world?
(「自分」を変えるぞ!準備はいいか?)
若き起業家や学生が多く参加した今回のイベント。
「挑戦しよう!応援、支援するから!」
「一歩踏み出せ!一歩踏み外せ!一歩はみ出せ!」
多くの励みとなる言葉を山川先生からいただいたことで、会場の参加者たちの心は熱くなり、興奮に包まれながら前半時間は終了しました。
若き起業家によるピッチ
イベント中盤からは、愛知県立大学・愛知県立芸術大学などの学生たち(6組)によるピッチです。各発表のおわりには、ゲストアドバイザーの山川先生と柴山様に講評をいただきました。
「Nexus Square」 愛知県立大学 小林優花さん
「NexusSquare」
は、大学に関する学生の困りごとを学生主体で解決するためのサービス。授業・サークル・留学などのQ&Aや、授業のレビュー口コミを投稿できるコミュニティーサイトです。
所属するコミュニティーや、コロナ禍によって生じる『大学生の情報格差の問題』を何とかしたい!という、学生たちの切実な思いから、このサービスが生まれました。
収益化方法として、Googleアドセンスや行動特性データの販売などを検討しており、最終的には全国の学生290万人へのターゲット拡大を目指します。
両アドバイザーからは、学生による学生のための、当事者意識・課題意識が高いサービスであると高評価。一方で、既存サービスとの差別化をどのように図るか、信憑性の高い情報をどのようにキュレーションできるか、といった課題も示されました。
また、メインターゲットを、学生だけでなく大学や大学以外の教育機関向けにすることで、定期的な収入やプラットフォームビジネスにできる可能性が広がると激励していただきました。
「musbun」 椙山女学園大学 鈴村萌芽さん
「musbun」は、「福祉施設体験をしたい」という学生と、「たくさんの学生と繋がりたい福祉施設」とをマッチングさせるためのサービスです。このサービスが生まれたきっかけは、鈴村さんの「小さいころからたくさんのお年寄りに可愛がってもらったので少しでも恩返しがしたい」という思いからでした。
高齢者介護人材不足は深刻です。一方、学生たちが介護福祉のお手伝いをしたいと思っても、実際にどのように行動に移せばよいかわからないというのが現状です。
そこで、福祉事業者に福祉体験の募集情報を「musbun」へ掲載してもらい、ボランティア・アルバイト・インターン希望者向けに、幅広く情報を提供することにしました。学生の利用は無料で、収益は施設側からの募集記事掲載料としています。
まずは、高齢者・障がい者・児童向け施設を中心に2021年12月26日リリースを予定しており、先駆けての実証実験では、40名の学生と5施設に参加してもらい、9件のマッチングに成功しました。
このピッチに対しては、両アドバイザーから高い評価をいただきました。
福祉体験を通じて福祉人材を増やすという素晴らしい試み。収益性だけでなく社会課題解決のためのスタートアップである「ソーシャルスタートアップ」の好例であり、ぜひ同じ課題を抱える市町村自治体へ相談してはどうか、そうすることで、ビジネスの幅が広がることに大いに期待したい、との講評でした。
「NURSE+多言語」 愛知県立大学 橋本智恵さん
イギリスで看護師として働いたことのある経験や、ミャンマーでの国際ボランティアの体験から、「生きることには格差がない」と感じた橋本さん。帰国後、日本に滞在する外国人の保健医療についての課題を解決したいと考えました。
ここ愛知県は、技能実習生が全国で最も多い地域です。現在のコロナ禍では、特に日本語がわからない外国人たちが、医療機関・保健所との意思疎通や情報の獲得が困難な状況に置かれています。そんな彼らが必要な情報にアクセスできるよう、日本語・英語だけでなく多言語に対応するサービスを提供したいと考えました。
今回は残念ながら時間切れとなってしまいましたが、リアルな現状や思いがとてもよく伝わり、「ソーシャルスタートアップ」として、顕在化した大きな課題をあぶりだした点を高く評価されました。
こうしたことは、公共サービスで、ぜひとも取り組むべき重要な課題。ナース以外のサービスにも拡大できるような汎用性ビジネスモデルを構築することで、いずれどこかの市町村が採用してくれるはず。必ずニーズがあるので、これからのブラッシュアップに期待します!と、力強いフィードバックをいただきました。
「Ruly」 名古屋大学 金岡優依さん
企業にとっての「顧客」を、パーソナリティーを持った「個客」として認識できる顧客解析プラットフォームサービスが「Ruly」です。
Ruly AIが分析することで、その顧客の新たなパーソナル情報を引き出すことが出来ます。その情報をもとに販売戦略を構築し、より効率の良い販売方法や、余剰在庫の削減、潜在コストの有無などが可視化されます。
Rulyユーザー企業へのアプローチとしては、はじめは既存ソフトを使い、導入しやすい方法からのスタートを提案します。徐々にペルソナに的を絞ったキャンペーンや、解析情報に基づく接客を提案するなど、Ruly AIから新たに取得した情報をもとに、さりげなく販売アクションに落とし込むようにします。
「Ruly」は、両アドバイザーから「素晴らしい!」と絶賛していただきました。
今後については、ビジネスパートナーやファンを増やすこと、さらにこのサービスを発展させるために、個人情報データについて暗号化技術を活用すると良いことや、大手小売りチェーンのネットワークを活用して店舗分析を行うと良いとのフィードバックをいただきました。
「Decentra」 京都大学 大森美紀さん
浄化槽を利用する分散型排水処理の手間とコストを抑えるためのサービスが「Decentra」。将来的に下水道インフラ業務の人材不足が予想される日本だけでなく、東南アジアなどの下水道インフラ設備がまだ不十分な地域に提案したいサービスです。
各家庭の浄化槽にセンサーを設置し、浄化槽のIoT化を進めることで、「バーチャル集中型管理による分散型排水処理」が可能になります。
これにより最適なタイミングで浄化槽を点検することができ、人的コストの削減が期待できます。また利用者には、水の使用感や、浄化槽・水回りのトラブルが分かるといったメリットを提供できます。
将来的には、水回りの点検や故障予防・予期ができる、壊れにくいスマートハウス「水循環ハウス」を作りたいという思いを発表してくれました。
フィードバックでは、高齢者向けスマートハウスの仕組みの中に、どのように組み込めるかを考えてほしいとのことでした。
高齢化・過疎化が進む日本では、このようなサービスは今後ニーズが増えることが予想されます。浄化槽のみならず、空調管理、見守りサービス、電気サービスなどの総合サービスの一環としてあらかじめ組み込み、パッケージ化して販売出来ると良いのではないかというアドバイスをいただきました。
「Ramblist」 愛知県立芸術大学 中井友紀乃さん
旅や散策を自分らしい感性で成功させるためのアプリサービスが「Ramblist」です。
ユーザーがSNSやwebへ投稿したワードなどから自動的に抽出を行い、旅先や散策の際にその人の感性にフィットするお薦めスポットや価値観に合う情報を提供するというものです。
このアプリへのユーザー登録は無料で、アプリ使用時には、半径25㎞以内にあるユーザー好みのスポットのポップアップ広告が表示されます。
収益化方法として、表示範囲に合わせた事業者からの広告収入でマネタイズさせるほか、該当エリアでユーザーが課金をするとユーザー好みの情報が可視化されるといった「投げ銭機能」も取り入れる予定です。
このアプリを通して、地域のファンを創出し、ファンが地域を作る社会を目指したいとのことでした。
フィードバックでは、芸大生らしい感性で生まれたニーズを事業にできた点を高く評価されました。
さらには、例えばアプリの中に画像などのユーザー作品を埋め込むなど、ユーザーのオリジナリティーを高めること、「Ramblistを使うこと・見ることそのものが楽しい」とユーザーに思わせることが、他サービスとの差別化を図るためには重要だとの講評をいただきました。
本イベントの登壇者メンタリングやイベント当日運営では、講演いただいた山川先生がアクションプラン講師を務めるJWLI Bootcamp NagoyaのAlumniのみなさんにご協力いただきました。ご尽力いただき、ありがとうございました。
(JWLI Bootcamp Webサイト:https://jwlibootcamp.org/ )
《JWLI Bootcamp NagoyaのAlumniのみなさん(順不同 敬称略)》
杉浦 加菜子(株式会社じょさんしGLOBAL Inc.) https://josanshi-cafe.com/
助産師として都内産科病院の産婦人科とNICU(新生児治療室)勤務後、夫のオランダ赴任に帯同。自身も海外で妊娠・出産・育児を経験。「誰もが心と身体の健康を大切に生きれる未来を」との思いから、2019年に「株式会社じょさんしGLOBAL Inc.」を設立。
長尾 晴香(株式会社link design lab/Vivaおかざき!!)
http://link-dl.com/ / https://viva-okazaki.com/
学生時代の留学での「外国人」として生活する苦労が原体験となり、2010年に国際交流NGO「Vivaおかざき!!」を設立。また、地域との接点づくりに加え、就労・キャリア支援を行うため、2019年に株式会社link design labを設立。
鈴木 美苗(合同会社学生ギルド)https://gakuseiguild.co.jp/
家業の時計店を夫とともに営み、大学、看護学校で非常勤講師を務める。2020年、共同代表の大学生とともに合同会社学生ギルドを設立。オンラインプログラミング教室STREAM、キャンプ、オンラインコミュニティ、フェスなどを行いSTREAM教育の実践を目指す。
加藤 美奈子(春日井環境アレルギー対策センター)https://www.kasugaikankyou.com/
非営利型一般社団法人日本室内空気保健協会 代表理事。環境アレルギーアドバイザー支援ネットワーク愛知 代表者。自身の子どもの喘息がきっかけとなり、病気育児の子育て支援サークルを設立。その後、環境アレルギー対策のまちづくりを目指し、2018年、営利事業所 春日井環境アレルギー対策センターを設立。
クロージング
最後は名刺交換などの交流タイムと、参加者全員で写真撮影。和やかな雰囲気の中、イベントは終了となりました。
今回の参加者は、スタッフ・登壇者を含め、会場36名・オンライン30名の計66名。
一人の力では実現が難しいほんの小さなアイデアも、同じ目標を持つ人たちとともに活動することで、その可能性のタネを大きく育てる力になるということを、今回のイベントでは実感することができました。
学び舎momは、今後も多様でオープンな学びとつながりの機会を提供し、個人・企業・自治体の新しい挑戦をサポートしていきます。
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